皆さん、「パーパスドリブン」という言葉を聞いたことがありますか?「パーパス(Purpose)」とは、直訳すると「目的」や「存在意義」。「ドリブン(Driven)」は「~によって動かされる」という意味を持ちます。この2つの言葉を組み合わせた「パーパスドリブン」は、「個人や企業・組織が自分達の大切にする目的や意義を原動力にして行動すること」を意味します。
これまで、企業においては「利益」や「効率」。個人では、「給与」などの待遇面が優先されてきましたが、新たに「なぜそれをやるのか?」という根本的な意義や、自分自身の価値観、社会との繋がりを意識した働き方や生き方が登場し、注目されるようになりました。今回は、このパーパスドリブンについて、企業での取り入れ方(パーパスドリブン経営)を中心にお話をしていきたいと思います。
なぜ今、パーパス
ドリブン経営が重要なのか
パーパスドリブン経営が重要視される理由について、ここでは大きく3つの観点から説明します。
社会の価値観の変化
環境問題や貧困、ジェンダー問題など多くの社会課題が山積している現代。企業も利益を追求するだけでなく社会へどのように貢献しているのか、その存在意義が問われる時代になってきました。国連が提示した持続可能な開発目標(SDGs)の普及も、この変化を後押しし、企業が社会的意義のあるパーパスドリブンを掲げる風潮が広がっています。
消費者もまた、社会的責任を果たす企業を支持するようになりました。ミレニアル世代(1980年代前半から1990年代半ば頃に生まれた人)以降によく見られるのですが、商品やサービスを選ぶ際、価格や品質だけでなく、企業が掲げる社会的な使命に共感した商品を選ぶという行動が見受けられるようになりました。
長期的な企業の成長
パーパスドリブンを明確にすることで、組織は長期的な視点で「どのような価値を社会に提供するのか」を意識した経営が可能になります。これにより、持続的な成長が促されるだけでなく、社会的責任を果たすことで投資家からの支持を得て、ブランド力の向上にもつながります。近年、投資家の評価基準はESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する傾向が強まっています。そのため、社会貢献の姿勢を明確に示すことが、信頼の獲得と持続的な成長のポイントとなるでしょう。
社員のエンゲージメントの向上
パーパスドリブンは、社員のエンゲージメント(愛着・愛社精神)を高めるのにも大きな役割を果たします。パーパスを社員と共有することで、仕事の意義を実感し、モチベーション向上につながります。また、働く目的を明確にすることで、仕事への主体性が高まり、生産性の向上にも繋がるでしょう。
パーパスを掲げ活用している企業
では、最後にパーパスを掲げた経営を実践している企業例をご紹介します。
ライオン株式会社におけるパーパス
オーラルケア事業を中心に、さまざまな私達の身近にある商品を製造・販売するメーカーであるライオン株式会社は「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する (ReDesign)」というパーパスを掲げています。この「習慣づくり」とは、具体的には歯磨きの習慣を定着させるということで、行政や医学会、そして学校などとの連携を行い小学生を中心とした予防歯科の意識を根付かせる活動をしています。
サントリーホールディングス株式会社におけるパーパス
飲料・食品メーカーとして幅広い事業を展開するサントリーホールディングス株式会社も、「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす。」というパーパスを掲げています。全国各地での森林保全活動や、水源の環境保全活動などさまざまな活動を行っています。
このようにパーパスを掲げ、社会貢献を果たしながら活動を行う企業が日本でも増えています。企業ブランドの価値を向上させ消費者からの信頼、社員のエンゲージメントを高めるパーパスドリブン経営は、今後ますます普及していくことでしょう。